「Ikigai」って大きな夢のこと?朝の味噌汁と洗濯物の山で見つけた、人生の羅針盤
みなさん、こんにちは!日本の片隅で、日々家事と育児に奮闘している主婦の〇〇です。
そちらの国では、今の季節はどんな風を感じますか?
ここ日本は、四季の移ろいがとても繊細です。今朝、窓を開けると、ひんやりとした空気がスッと部屋に入り込んできて、どこからともなく金木犀(きんもくせい)の甘い香りが漂ってきました。「あぁ、今年もまたこの季節が巡ってきたんだな」と、なんだか古い友人に再会したような、懐かしくて温かい気持ちになりました。
さて、今日みなさんとシェアしたいのは、最近海外でもとってもホットな言葉、**「Ikigai(生きがい)」**についてです。
もしかしたら、本屋さんやSNSで、カラフルなベン図(4つの円が重なった図)と一緒にこの言葉を見かけたことがあるかもしれませんね。「長寿の秘訣」とか「幸せの哲学」として紹介されることが多いこの日本語。でも、日本に住む私たち主婦にとっての「生きがい」って、実はもっともっと泥臭くて、でもとびきり愛おしい、日常の中に隠れているものなんです。
今日は、私がまだ「生きがい」という言葉の本当の意味を知らず、日々のルーティンワークに溺れそうになっていた頃の話から始めさせてください。
「私の人生、これだけでいいのかな?」という朝の問いかけ
正直に告白しますね。
数年前の私は、毎朝目が覚めるのが少しだけ憂鬱でした。
目覚まし時計のアラームが鳴ると、「あぁ、また同じ一日が始まる」とため息をつく。
ベッドから這い出し、家族のために朝食を作り、夫を送り出し、子供たちの支度を手伝い、洗濯機を回して、掃除機をかける。スーパーで特売の野菜を見つけて喜んだり、夕食の献立に悩んだり。
もちろん、家族は大切です。愛しています。
でも、ふとした瞬間に、心の中に小さな隙間風が吹くのを感じていました。
「私は誰かの『お母さん』であり、誰かの『奥さん』だけど、私自身はいったい何なんだろう?」
「このまま毎日、洗濯物を畳んで、お皿を洗って、年を取っていくのかな?」
海外で暮らすみなさんも、異国の地で家族を支えながら、ふとそんな風に孤独や焦りを感じることはありませんか?
言葉の壁や文化の違いの中で、自分のアイデンティティが少しずつ薄れていくような、そんな感覚。
私が「Ikigai」という概念に改めて出会い、救われたのは、まさにそんな「中年の危機(ミッドライフ・クライシス)」に片足を突っ込んでいた時期でした。
世界が注目する「Ikigai」と、日本人が感じる「生きがい」のギャップ
面白いことに、私が「Ikigai」の深さに気づかされたのは、日本の本ではなく、海外の友人からのメールがきっかけでした。
「ねえ、日本の『Ikigai』って素晴らしい哲学ね! あなたのIkigaiは何?」と聞かれたんです。
その時、私は答えに詰まってしまいました。
私たち日本人にとって「生きがい」という言葉はあまりにも当たり前すぎて、改めて定義なんてしたことがなかったからです。
そこで私は、海外で紹介されている「Ikigai」について調べてみました。
そこには、「好きなこと」「得意なこと」「世界が必要としていること」「対価が得られること」の4つが重なる中心点こそがIkigaiであり、それを見つけることが幸福への近道だと書かれていました。
「えっ、ちょっと待って。それってハードル高すぎない?」
それが私の第一印象でした。
だって、「世界が必要としていること」で、しかも「お金になること」?
専業主婦として家を守っている私には、そんな大それたもの、関係ないんじゃないか。起業家やアーティストのための理論なんじゃないか。そう思ってしまったんです。
でもね、深く調べていくうちに、そして日本のお年寄りたちの姿を思い出すうちに、私はあることに気づきました。
海外で分析されている「Ikigai」のフレームワークと、日本人が昔から肌感覚で持っている「生きがい」には、少しだけ、でも決定的な「温度差」があるということに。
「北極星」としての生きがい
日本の沖縄県(世界的な長寿地域「ブルーゾーン」の一つとして有名ですよね)のおばあちゃんたちに「あなたの生きがいは?」と聞くと、彼女たちは決して「世界を変えるビジネスをすること」なんて答えません。
「ひ孫の顔を見ることさ」
「庭のゴーヤが元気に育つことさ」
「近所の友だちとお茶を飲みながら笑うことさ」
そう答えるんです。
彼女たちの「生きがい」は、決して大きな社会的成功や、莫大なお金とは結びついていません。もっと手触りのある、半径5メートル以内の幸せ。
でも、その小さな幸せこそが、彼女たちを毎朝布団から力強く起き上がらせる**「燃料(Fuel)」**になっているんです。
私はここでハッとしました。
「Ikigai」とは、遠くにあるゴール(目的地)のことではないのかもしれません。
それは、日々の生活という大海原を航海するための**「北極星(North Star)」**のようなもの。
目的地にたどり着くことだけが重要なのではなく、「あっちに向かって進んでいるんだ」という確信を持って、今日という一日に舵を切ること。
「今日、これをやるために私は起きるんだ」という、小さくても確かな理由。それこそが、本来の「生きがい」の正体なのではないかと。
モノクロの日常が色づき始めた瞬間
この「北極星」という視点を持った時、私の退屈だったルーティンが、急に色を持ち始めました。
例えば、毎日のお弁当作り。
以前は「面倒なタスク」でしかありませんでした。
でも、「私の生きがい(北極星)は、家族の健康を守り、食卓から笑顔を作ること」と定義してみたんです。
するとどうでしょう。
ただの「卵焼き」が、「午後の授業を頑張る息子へのエール」に変わりました。
スーパーで旬の野菜を選ぶ時間が、「季節のエネルギーを家族に届けるミッション」に変わりました。
やってることは同じなんです。
端から見れば、私は相変わらずキッチンに立つただの主婦。
でも、私の内側では、革命が起きていました。
「やらされている家事」が、「私の意志でクリエイトする時間」に変わったのです。
これが、Ikigaiが持つ本当のパワーです。
それは、日常の風景を一変させるフィルターのようなもの。
特別なスキルを身につけたり、環境を劇的に変えたりする必要はありません。
ただ、自分の心の「在り方」と「向かう先」をセットするだけ。
海外で生活されているみなさんは、日本にいる私よりももっと、日々の生活の中で「適応すること」にエネルギーを使われていると思います。だからこそ、自分の中心軸となる「北極星」を見つけることが、心の安定と、毎日の活力を生む大きな助けになるはずです。
この記事であなたに手渡したいもの
これから続く記事(承・転・結)では、この漠然とした「生きがい」という概念を、もっと具体的で、明日にでも実践できる形に落とし込んでいきます。
海外で流行している「4つの円(ベン図)」のフレームワークは、とても優秀なツールです。
でも、それをそのまま主婦の生活に当てはめようとすると、どうしても無理が生じます(特に「稼ぐ」の部分とかね!)。
だからこそ、日本人の主婦である私が、このフレームワークを**「生活者視点」でリメイク**してお届けします。
ビジネス書には載っていない、生活の知恵としてのIkigaiの探し方。
それはきっと、あなたの毎日の「Daily Drive(日々の原動力)」を加速させるエンジンになるはずです。
さあ、心の準備はいいですか?
次のパートでは、紙とペンを用意してください。
あなたの中に眠っている「宝の地図」を、一緒に広げていきましょう。
4つの円で自分を知る旅へ。「好き・得意・需要・稼ぎ」が交差するスイートスポットの探し方
おかえりなさい!
前回の記事で、Ikigaiは遠くにあるゴールではなく、毎日の足元を照らす「北極星」だというお話をしました。
「なんとなく分かったけれど、じゃあ私の北極星はどこにあるの?」
そう思ったあなた、その感覚は正しいです。
今日は、その北極星の正確な位置を割り出すための「宝の地図」を広げたいと思います。
コーヒーか紅茶、好きなお茶を用意して、リラックスして読み進めてくださいね。
西洋で体系化された「Ikigaiチャート」の魔法
実は、「Ikigai」という言葉が海外で爆発的にヒットした背景には、ある一つの図解(ダイアグラム)の存在があります。
みなさんもPinterestやInstagramで一度は目にしたことがあるかもしれません。4つの円が重なり合い、その真ん中に「Ikigai」と書かれたあの図です。
これは、フランスの占星術的な概念図を元に、マーク・ウィンという起業家がIkigaiの概念を当てはめて作ったと言われています。
日本人が感覚的に捉えていた「生きがい」を、論理的に可視化した素晴らしいツールです。
この4つの円は、以下の要素で構成されています。
- What you LOVE(あなたが大好きなこと)
- What you are GOOD AT(あなたが得意なこと)
- What the world NEEDS(世界が必要としていること)
- What you can be PAID FOR(あなたが稼げること)
この4つ全てが重なる中心点、そこが「Ikigai(生きがい)」であり、至福の領域(スイートスポット)だというのです。
「えっ、やっぱり『稼ぐ』が入ってるじゃない!」
そう身構えてしまった主婦のみなさん、大丈夫です。安心してください。
日本には古くから、この「稼ぐ」や「働く」をもっと広く、温かく捉える素敵な言葉の解釈があります。
今日はこの4つの円を、私たち「海外に住む日本人主婦」のライフスタイルに合わせて、少し特別な視点で読み解いていきましょう。
第1の円:What you LOVE(あなたが大好きなこと)
~時間を忘れる「没頭」の源泉~
まず最初の円は、「心」の領域です。
ここで大切なのは、「人に自慢できるような趣味」である必要は全くないということ。
日本には「オタク(Otaku)」という言葉がありますが、あれくらい何かに没頭できるエネルギーは素晴らしい才能です。でも、もっと些細なことでいいんです。
- 朝、完璧な温度でコーヒーを淹れる瞬間が好き。
- 洗いたてのシーツの匂いを嗅ぐのが好き。
- Excelで家計簿の数字がピタリと合う瞬間が好き。
- YouTubeで猫の動画を見ている時が幸せ。
自分に問いかけてみてください。
「誰に頼まれなくても、ついやってしまうことは何ですか?」
「時間を忘れて、あっという間に過ぎてしまう活動は何ですか?」
私の場合、それは「文章を書くこと」と「冷蔵庫の残り物でパズルをするように料理を作ること」でした。キラキラした趣味ではありませんが、私の心が「凪(なぎ)」になる大切な時間です。
第2の円:What you are GOOD AT(あなたが得意なこと)
~頑張らなくてもできてしまう「天然」の強み~
2つ目の円は、「才能」の領域です。
ここで多くの日本人女性は謙遜して、「私には何の取り柄もありません」と言ってしまいがちです。
でも、ここでの「得意」は、資格やスキルのことではありません。
**「あなたが息をするように自然にできて、他人にとっては難しいこと」**です。
例えば、
- あなたは無意識にやっているけれど、よく人から「マメだね」と言われること。
- 友達の話を聞いているだけで、相手が勝手に元気になっていくこと。
- ごちゃごちゃした引き出しを見ると、整理せずにはいられないこと。
私の友人に、ものすごく心配性な女性がいました。彼女はそれを「短所」だと思っていましたが、見方を変えれば「リスク管理能力がズバ抜けて高い」ということ。彼女が計画する旅行は、あらゆるトラブルへの備えが完璧で、みんなが安心して楽しめるのです。これも立派な「得意」です。
自分にとって当たり前すぎて気づかないことが、実はあなたの最強の武器なのです。
第3の円:What the world NEEDS(世界が必要としていること)
~半径5メートルの「世界」を見渡す~
3つ目の円は、「貢献」の領域です。
「世界」なんて言うと、国連や環境問題を思い浮かべてしまうかもしれませんが、主婦にとっての「世界」はもっと身近でいいのです。
- あなたの家族
- あなたの住むコミュニティ
- 遠く離れた日本の両親
- SNSで繋がっている誰か
「あなたの周りの人は、何に困っていますか?」
「何があれば、彼らはもっと笑顔になれますか?」
日本には「おもてなし」の心がありますが、それは相手が何を求めているかを察する力です。
「夫は仕事で疲れているから、家では静かに過ごしたいはず」「子供たちは現地の学校で緊張しているから、家では日本語で甘えたいはず」。
その小さなニーズに気づくこと。それが「世界が必要としていること」の種になります。
第4の円:What you can be PAID FOR(あなたが稼げること)
~「対価」を再定義する:日本的「はたらく」の美学~
さあ、最後の難関、4つ目の円です。
専業主婦の方や、海外で就労ビザの制限がある方にとって、ここは一番の壁に見えます。
「お金を稼いでいない私は、Ikigaiを持てないの?」と。
ここで、日本の素晴らしい言葉の解釈をご紹介します。
日本語の「はたらく(働く)」の語源には、諸説ありますが、**「傍(はた)を楽(らく)にする」**という意味が込められているという説があります。
つまり、周りの人を楽にしてあげること、心地よくしてあげること、それ自体が「はたらく」ことの本質なのです。
この円における「PAID(支払い)」を、単なる「通貨(Money)」だけでなく、**「価値の交換(Value Exchange)」**と捉え直してみましょう。
- 感謝という対価: 「ありがとう」「美味しかった」という言葉。
- 信頼という対価: 「あなたがいると安心する」という居場所。
- 未来への対価: 節約して浮いたお金(=稼いだのと同じ価値)や、子供の健やかな成長。
もちろん、現代社会ではお金も大切です。ブログを書いたり、ハンドメイド作品を売ったりして、実際にお金を得ることも素晴らしいIkigaiの形です。
でも、まずは「誰かの役に立ち、そのエネルギーが何らかの形で自分に返ってくる循環」があるなら、それはこの第4の円を満たしていると考えてみてください。
現代版Ikigaiの実践例:ある主婦「サトミさん」のケース
概念だけでは分かりにくいので、架空ですが、とてもリアルな現代の主婦「サトミさん」の例を見てみましょう。彼女はアメリカ在住、2児の母です。
- 好きなこと(Love): スマホで写真を撮ること。特に、作ったお弁当や、日常のちょっとした風景を綺麗に撮るのが好きで、加工アプリをいじる時間は夢中になれる。
- 得意なこと(Good At): 情報をまとめること。現地のスーパーで「これは日本人の口に合う」「これは失敗だった」という商品を分析し、頭の中でデータベース化するのが無意識に得意。
- 世界(=周り)が必要としていること(Needs): 同じ地域に引っ越してきたばかりの日本人駐在妻たちが、現地の買い物で困っている。「薄切り肉はどこで買える?」「安全な洗剤は?」という情報を求めている。
- 稼げる(=対価が得られる)こと(Paid/Reward): 最初は友人にLINEで教えていただけでしたが、感謝されることに喜び(報酬)を感じていました。そこで、彼女はInstagramで地域情報を発信し始めました。フォロワーが増え、感謝のコメントが殺到(精神的報酬)。やがて、その情報が評判となり、地域の日本人向け情報誌でコラムを書くことになり、少額ですが原稿料(金銭的報酬)を得るようになりました。
サトミさんのIkigaiは、**「現地の生活情報を、美しい写真と共に発信し、同胞の不安を解消すること」**になりました。
始まりは「スーパーでの買い物」と「スマホいじり」です。でも、4つの円が重なった時、それは強力な「生きがい」へと進化したのです。
【実践ワーク】あなたのIkigaiを見つける4つの質問
さあ、次はあなたの番です。
以下の質問に対する答えを、紙に書き出してみてください。きれいに書こうとせず、思いついたことを単語でどんどん並べていくのがコツです。
【ワーク:Ikigaiの4つの円を描く】
Q1:あなたの心が「純粋に喜ぶ」ことは何ですか?
(ヒント:お金にならなくても、誰にも褒められなくてもやりたいことは?)
Q2:あなたが「努力しなくても他人よりうまくできる」ことは何ですか?
(ヒント:よく人から頼まれることや、昔から通知表で褒められたことは?)
Q3:あなたの「大切な人たち」は今、何を求めていますか?
(ヒント:家族の笑顔が増える瞬間はどんな時? 友人があなたに相談することは?)
Q4:あなたが提供できる価値に対して、どのような「報酬」が得られますか?
(ヒント:それはお金かもしれないし、節約かもしれないし、深い感謝や絆かもしれません)
書き出してみると、バラバラに見えていた要素の中に、共通するキーワードが見つかるかもしれません。あるいは、全く関係ないと思っていた「好きなこと」と「得意なこと」が、意外な形で結びつく可能性に気づくかもしれません。
「でも……」
ペンを止めてしまった方もいるかもしれませんね。
「4つ全部が重なる場所なんて、そう簡単に見つからないよ」と。
その通りです。これらが完璧に重なる「真ん中」を見つけるのは、簡単なことではありません。
多くの人が、この図を見て「完璧なバランス」を目指そうとして挫折してしまいます。
ですが、ここで**「日本流の知恵」**の出番です。
実は、Ikigaiにおいて「4つの円が最初から完璧に重なっている必要はない」のです。
むしろ、歪(いびつ)でいい。小さくていい。
次回の【転】では、この4つの円のフレームワークを、もっと自由に、もっと軽やかに使いこなすための**「主婦流・逆転の発想」**をお伝えします。
「世界が必要としていること」なんて大げさに考えすぎていませんか?
そこには、あなたがまだ気づいていない、驚くほどシンプルな「答え」が隠されています。
完璧を目指さなくていい。「世界が必要としていること」を“家庭サイズ”に翻訳する、主婦流・逆転の発想
みなさん、こんにちは。
前回の記事で、紙とペンを持って「うーん」と唸ってしまった方、手を挙げてください。
はい、きっとたくさんいらっしゃいますよね(笑)。
「好きなことはある。でも、それがお金になる気がしない」
「得意な家事はある。でも、これが世界に必要とされているなんて思えない」
そんな風に、4つの円の中心(スイートスポット)が見つからなくて、逆にモヤモヤしてしまったかもしれません。
でも、ここで少し意地悪なネタばらしをさせてください。
実は、前回ご紹介したあの有名な「4つの円」の図……あれは、「西洋的な成功法則」として再解釈されたIkigaiなんです。
私たち日本人が本来持っている、もっと土着で、もっと柔らかな「生きがい」の感覚とは、少しだけ(でも決定的に)ズレている部分があります。
今日は、そのズレを修正しながら、あの難しい図を**「完璧に埋めなくてもいい理由」**をお話しします。
ここからの話が、きっとあなたを本当の意味で自由にするはずです。
誤解1:「Ikigai」は一つに絞らなくていい
~「一品豪華主義」より「幕の内弁当」の幸せ~
多くの人が陥る最大の罠。それは「人生をかけた、たった一つのIkigaiを見つけなきゃ!」と思い込んでしまうことです。
まるで、伝説の剣を探す勇者のように。
でも、日本人の感覚は少し違います。
私たちの生きがいは、もっと**「幕の内弁当」的**なんです。
幕の内弁当を思い出してください。
小さな焼き魚、少しの卵焼き、煮物、お漬物、そして俵型のご飯。
一つ一つは決して主役級の豪華な料理ではないかもしれません。でも、その「小さな好き」や「小さなこだわり」が箱の中に集まることで、全体として大きな満足感(=幸せな人生)を作り出しています。
- 朝、植物に水をやる喜び(Love)
- 子供の服のボタンを素早く付け直す特技(Good at)
- ママ友の愚痴を聞いて感謝される時間(Needs & Paid in gratitude)
これらはバラバラでいいんです。
無理やり一つの「仕事」や「活動」に統合しようとするから苦しくなるのです。
「私の人生には、これが一つあればいい」という大きな柱を探すのではなく、「小さな生きがいのかけら」を日常の中にたくさん散りばめること。
それが、日本人が自然に行っているIkigaiのスタイルです。
今日は植物の世話が生きがい、明日は友人とランチするのが生きがい。その日その日で、メインのおかずが変わってもいい。そう思えば、少し肩の荷が下りませんか?
誤解2:「世界」を「家庭」に翻訳する
~半径3メートルの平和維持活動~
次に、多くの主婦が躓く「What the world NEEDS(世界が必要としていること)」という大きな壁について。
この「世界(World)」という言葉の響きが、私たちを圧倒します。
「環境問題? 貧困解決? 私にはそんな力ないわ」と。
ここで、**「主婦流・逆転の発想」を使いましょう。
この「世界」という言葉を、「私の手の届く範囲」**と書き換えてしまうのです。
日本には**「家内安全(Kanai Anzen)」**という言葉があります。
家族が健康で、事故なく無事に過ごせること。これこそが最も尊い願いであり、守るべき基盤だという考え方です。
あなたにとっての「世界」とは、まずはあなたの「家」の中です。
もしあなたが今日、不機嫌な顔をせず、笑顔で家族に「おはよう」と言えたなら。
あなたは、あなたの世界(家)に「平和」をもたらしました。
もしあなたが今日、栄養バランスを考えた夕食を作ったなら。
あなたは、あなたの世界(家族)の「健康」を守り、医療費という社会的コストを削減することに貢献しました。
大げさではありません。
社会という大きな海も、結局は「家庭」という一滴一滴の水の集まりです。
あなたが自分の家庭を明るく照らすことは、巡り巡って、本当の世界を良くすることに直結しています。
「世界を変える」なんて考えなくていい。
「今夜の食卓を少しだけハッピーにする」。
それだけで、あなたは十分に「世界が必要としていること」を満たしているのです。この視点の切り替えこそが、日々の単調な家事に誇りを取り戻す鍵になります。
誤解3:「稼ぐ」はお金だけじゃない
~「心の報酬」と「未来への投資」~
そして最後の壁、「What you can be PAID FOR(稼げること)」。
ここも、西洋的な「対価=Money」という図式から、日本的な**「恩送り(On-okuri)」や「徳を積む」**という感覚へシフトしてみましょう。
もちろん、生活にはお金が必要です。
でも、Ikigaiにおける「報酬」は、銀行口座の数字だけではありません。
私が日本で出会ったある専業主婦の方のお話です。
彼女は毎日、近所の公園のゴミ拾いをしていました。誰に頼まれたわけでも、一円になるわけでもありません。
「どうしてそこまでするの?」と聞くと、彼女は笑ってこう言いました。
「ここが綺麗だと、遊んでいる子供たちの笑い声が増えるのよ。その声を聞きながらベンチで編み物をするのが、私の最高の報酬(給料)なの」
彼女にとっての「Paid」は、「心地よい環境」と「子供たちの笑顔」でした。
彼女は、自分の行動で「自分の居場所」を豊かにし、その恩恵を自分自身で受け取っていたのです。
海外で暮らすみなさんも、例えば日本語補習校のボランティアをしたり、近所の方に日本食をお裾分けしたりすることがあると思います。
そこで得られる「Thank you」の笑顔や、「あなたのおかげで助かった」という言葉。
あるいは、自分が作ったコミュニティで子供たちが楽しそうに遊ぶ姿。
これらを**「見えない通貨」**としてカウントしてみてください。
そう考えると、あなたはすでに、ものすごい額の報酬を稼ぎ出している「億万長者」かもしれませんよ?
逆転の発想:「未完成」こそが美しい
~Wabi-Sabi(侘び寂び)の精神で自分を許す~
最後に、日本文化の神髄である**「Wabi-Sabi(侘び寂び)」**の視点をIkigaiに取り入れましょう。
西洋の美学が「完璧であること」「左右対称であること」を良しとするのに対し、日本の美学は**「不完全であること」「移ろいゆくこと」**に美を見出します。
欠けた茶碗を金で継いで、新しい価値を生み出す「金継ぎ(Kintsugi)」のように。
あなたのIkigaiチャートも、歪(いびつ)でいいのです。
「稼げること」の円が小さくてもいい。「得意なこと」が見つからなくてもいい。
その「欠けている部分」があるからこそ、私たちは誰かと助け合うことができます。
全部自分で満たせる完璧な人間には、他人が入り込む隙間(愛される余白)がありません。
「今の私は、育児に手一杯で『社会への貢献』なんてできていない」
そう嘆くのではなく、
「今は『家族への愛(Love)』と『家庭の需要(Needs)』に特化した時期なんだな。この季節を楽しもう」
と捉えてみる。
人生には四季があります。
春には種を撒き(新しい興味)、夏には汗をかき(子育てや仕事)、秋には実りを収穫し(実績や感謝)、冬には土を休ませる(休息と内省)。
全ての円を常に満開にする必要はありません。
**「今は冬だから、土の中で根っこ(自分の心)を育てる時期」**と割り切ることも、立派なIkigai戦略です。
あなただけの「Ikigaiパズル」を始めよう
どうでしょう?
あの完璧に見えた4つの円が、少し緩んで、隙間だらけに見えてきませんか?
その隙間こそが、あなたの「自由」です。
Ikigaiとは、誰かが作ったテストの答案用紙を埋める作業ではありません。
色も形もバラバラなピースを拾い集めて、あなただけの絵を描くパズルのようなもの。
- 今日、美味しいお茶を淹れた。(Love)
- 子供の宿題を見てあげた。(Needs)
- 夫と昔の話をして笑った。(Good at connecting)
そんな小さなピースを、一日の終わりに「パチン、パチン」とはめていく。
「あぁ、今日もなんだかんだで、いい絵が描けたな」と思って眠りにつく。
それが、私たちが目指すべき**「Daily Drive(日々の原動力)」**の正体です。
大げさな夢を掲げて息切れするよりも、足元の小さな花に水をやり続けること。
それが結果として、あなたの人生という庭を、誰にも真似できない美しい場所に変えていきます。
さあ、肩の力が抜けたら、いよいよ最後の仕上げです。
次回の**【結】**では、この緩やかなマインドセットを、具体的な「明日の朝の習慣」に落とし込んでいきます。
三日坊主で終わらせないための、脳科学に基づいた(でもとっても簡単な)主婦の知恵をお伝えします。
あなたの「北極星」は、もうすぐそこに見えていますよ。
あなたの「北極星」が決まれば、明日の朝が変わる。今日から始める小さな魔法の習慣
長い間、私の話にお付き合いいただき、本当にありがとうございます。
ここまで読み進めてくださったあなたは、きっとご自身の中に眠る「Ikigai」の種に、すでに水をやり始めているはずです。
「よし、完璧じゃなくていいんだ」
「私の日常の中にこそ、宝物があるんだ」
そう思えたなら、もう準備は万端です。
最後のパートでは、その温かい気づきを、一過性の感動で終わらせないための**「技術」**をお伝えします。
Ikigaiを絵に描いた餅にせず、毎日の生活を動かすエンジン(Daily Drive)にするための、とても具体的で、誰にでもできる小さな習慣たちです。
魔法1: 「To-Doリスト」の前に「To-Beリスト」を作る
~「何をするか」より「どう在りたいか」~
私たちは主婦業をしていると、どうしても頭の中が「To-Doリスト」で埋め尽くされます。
「牛乳を買う」「銀行に行く」「子供の送り迎え」「夕食の準備」……。
これらは生活を回すために必要ですが、これだけを追いかけていると、心が枯れてしまいます。なぜなら、そこには「義務」しかないからです。
そこで提案したいのが、朝一番に心のなかで**「To-Beリスト(在り方リスト)」**を一つだけ決めることです。
これは、前回お話しした「北極星」を確認する作業です。
例えば、私の昨日のTo-Beはこれでした。
「今日は、家族の話を『ながら聞き』せず、目を見て聞く私で在る」
これだけでいいんです。
もしその日、家事が全部終わらなくても、夕食が手抜きになっても、子供が帰ってきた時に一度手を止めて「おかえり」と目を見て言えたなら。
その日の私は、私の「北極星(家族との絆)」に向かって正しく進めたことになります。
「できたか、できなかったか(Do)」の減点法ではなく、「そう在ろうとしたか(Be)」という加点法で自分を評価する。
これが、毎晩「今日もいい日だった」と思って眠るための秘訣です。
海外生活では、言葉が通じなかったり、手続きがうまくいかなかったりして、「何もできなかった(Can’t Do)」と落ち込む日もあるでしょう。
でも、「笑顔で挨拶しようとした私(Be)」は、誰にも否定できません。その誇りを胸に刻んでください。
魔法2: 「Kaizen(改善)」の精神で1日1ミリ進む
~三日坊主を防ぐ、日本流・スモールステップ~
Ikigaiに向かって何か新しいことを始めようとすると(例えば語学の勉強や、新しい趣味など)、私たちはつい張り切って大きな目標を立てがちです。
そして、3日後に挫折して、「やっぱり私はダメだ」と自分を責める……このパターン、覚えがありませんか?
ここで、日本の製造業が世界に誇る哲学**「Kaizen(改善)」**を、主婦の生活に取り入れましょう。
Kaizenの真髄は、「劇的な変化」ではなく、「終わりのない小さな改良」にあります。
「毎日1時間勉強する」ではなく、「毎日テキストを1ページ開く」でいい。
「家をピカピカにする」ではなく、「玄関の靴だけ揃える」でいい。
Ikigaiの追求も同じです。
「今日から人生を変える!」と意気込む必要はありません。
「昨日より1ミリだけ、自分が心地よいと思う方向にズレてみる」。
- いつもより5分だけ早く起きて、自分だけのためのお茶を淹れた。
- いつもはスルーするスーパーの店員さんに「Thank you」と笑いかけてみた。
- イライラした時、深呼吸を一つ挟んでみた。
この「1ミリ」の積み重ねは、1年後には想像もしなかったほど遠くへあなたを運んでくれます。
日本には**「千里の道も一歩から」**という言葉がありますが、最初の一歩は小さければ小さいほどいいのです。
Ikigaiとは、遠くのゴールに走ることではなく、今日という一日を丁寧に味わう「歩み」そのものなのですから。
魔法3: 「朝の儀式」でスイッチを入れる
~1日を支配するのは、最初の10分間~
「Ikigai: Your North Star for Daily Drive(毎日の原動力としての生きがい)」というタイトルの通り、Ikigaiが最も力を発揮するのは「朝」です。
脳科学的にも、朝起きてすぐの感情が、その日一日の気分を決定づけると言われています。
目覚ましに叩き起こされ、慌ただしくお弁当作りに突入する……これでは、誰かのための人生で一日が始まってしまいます。
私がおすすめするのは、**「自分だけの聖なる10分間」**を持つことです。
家族が起きてくる前、あるいは家族を送り出した直後の10分間。
この時間は、スマホを見ないでください。ニュースも見ないでください。
ただ、自分の五感を喜ばせるためだけに使います。
- お気に入りのマグカップで白湯を飲む。
- 窓を開けて、外の空気を胸いっぱいに吸い込む。
- 好きなアロマオイルの香りを嗅ぐ。
- 観葉植物に「おはよう」と声をかけながら水をやる。
この儀式は、自分自身への宣言です。
「私の人生の主役は私だ。今日も私は、私の意志で一日を始める」
この感覚を持ってキッチンに立つのと、追われるように立つのでは、見える景色が全く違います。
もし、「そんな時間ないわ!」という忙しいママさんがいたら、トイレの中の1分でもいいんです(笑)。
鏡に映る自分に向かって、ニコッと笑って「おはよう、今日も可愛いね!」と言ってみてください。
バカバカしいと思うでしょう? でも、これ、驚くほど効果があるんですよ。
最後に: あなたが「太陽」であればいい
ここまで、Ikigaiについて長くお話ししてきました。
最後に、私が一番伝えたかったことをお話しします。
日本には**「天照大神(アマテラスオオミカミ)」**という太陽の女神様の神話があります。
彼女が岩戸に隠れてしまった時、世界は真っ暗闇になり、災いが起きました。
逆に言えば、彼女が外に出て笑っているだけで、世界は光に包まれ、万物が豊かに育つのです。
家庭における「母」や「妻」も、まさにこの太陽と同じです。
あなたが海外という慣れない土地で、不安や孤独を感じて暗い顔をしていると、家庭全体がなんとなく曇ってしまいます。
でも、あなたが自分の「Ikigai」を見つけ、小さな喜びを感じ、毎朝ワクワクして目覚めることができたなら。
あなたが放つそのゴキゲンなオーラは、言葉を超えて、ご主人やお子さん、そして周りのコミュニティを照らす最強の光になります。
「家族のために自分を犠牲にする」のは、もう終わりにしましょう。
それは美しいようでいて、実は誰も幸せにしません。
あなたがまず、幸せになっていいのです。
あなたがIkigaiを生きて輝くことこそが、家族への最大のギフトであり、社会貢献なのです。
さあ、新しい朝を迎えに行こう
記事を読み終えた今、あなたの胸の中に、小さな灯火がともっていることを願っています。
それはまだ頼りない光かもしれません。風が吹けば消えてしまいそうに感じるかもしれません。
でも、大丈夫。
迷った時は、またこのブログに戻ってきてください。
そして、空を見上げて「北極星」を探すように、自分の心に問いかけてください。
「私の魂が喜ぶことは何?」
「私が愛する小さな世界は何?」
答えは、必ずあなたの中にあります。遠くの山の上でも、偉い先生の本の中でもなく、あなたの胸の真ん中に。
明日の朝、目が覚めたら、カーテンを開けて太陽の光を浴びながら、こう呟いてみてください。
「今日という日は、私のIkigaiを表現するための真っ白なキャンバスだ」
あなたの海外生活が、Ikigaiという彩りを得て、かけがえのない美しい物語になりますように。
日本の空の下から、いつもあなたを応援しています。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう。
素敵な一日を!

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